通訳トレーニングについて

先日あるSNSでつながっている方から質問をいただきましたので、そちらにお答えしていきたいと思います。質問の内容は「自分の声(通訳)を録音、確認した時、改善したことはありますか?どんなことをしていましたか?」です。


通訳トレーニングにおいて自分の訳出を録音して聞くことはとても重要だと思います。私の場合は、特に大学院時代に頻繁に自分の訳出を録音していました。(録音して自己分析したレポートを提出しなければならなかったということもありますが、そのような要件がなくても通訳者としては必ず行うべきことだと思います。)


その中で具体的に改善できたことは多々あります。


1. 自分の声、話し方、スピード、滑舌を理解する。

通訳中にはもちろんできるだけはっきりと分かりやすく話すつもりでいますが、それが必ずできているとは限りません。録音を聞けば、声を張った方がいいとか、スピードが早すぎるとか、特定の単語の滑舌が悪く聞き取りにくいなど、自分の問題点を客観的に観察し、改善につなげることができます。ちなみに、大学院生時代には、先生やクラスメートからフィードバックをもらいますが、「ともこさんは、文末の『す』の時に空気が出過ぎていて聞きにくい」と言われたことがあります。多分一生忘れないと思います(笑)。


2. 自分の口癖を理解する。

私の場合は「そして」を頻繁に使ってしまいます。これは未だに完全には治らない癖なのですが、少なくとも自覚があるだけで全然違います。というか、まず自覚がないことには直せませんよね。余談ですが「なので」という言葉はあまり良くないと思っていて個人的になるべく使わないように気をつけていますが、今や誰しもが使うのでたまに口から出てしまってびっくりします。(本当は「ですので」が適切だと思うのですが。)口癖になっている言葉がなんであれ、あまりに頻繁に繰り返すと聞きにくくなる場合があります。


3. filler(文章に詰まった時や、次の言葉が出てこない時に文章の間で使われるつなぎ言葉)を使い過ぎていないかチェックする。

日本語で言うと「えー」、英語なら"um"とか”well"などがあります。これらはゼロにする必要はないかもしれませんが、多過ぎても良くないと思います。スピーカーがよどみなく話しているのに通訳者がfillerを入れてしまっているのなら尚更です。私は大学院時代に徹底的に練習したおかげでfillerはかなり少ない方だと思います。

また通訳者でありがちな話し方として「XXの、おー、YYに、いー」のように読点の前の最後の最後の文字の母音を引っ張るというのがあります。個人的にはこれもないに越したことはないかなと思っています。


4. 語尾が無意味に上がっていないかをチェックする。

ちなみに英語では語尾を上げて話すことをupspeakと言いますが、これは訳していて確信がない時に出てしまいます。あまり頻繁だと自信がないようにも聞こえますし、要注意です。あと、特に日本語から英語に訳すときに語尾を上げる癖がついている方もいるようです。英語スピーカーでも癖になっている人もいてNPRやBBCでも聞きますが、やはりこれも違和感があります。(ちなみにアナウンサーではありません。)語尾を上げる癖とは別に(特に初心者で)「質問の時には常に語尾を上げる」と思ってしまっているのか、5W1Hの質問でも語尾を上げている方もいます。


録音をして改善したいと思うということは、すでに何かの問題点を自覚されているということなのでしょうか?声を使う仕事についていない限り、自分が話している様子を録音する方は非常に稀だと思いますが、一度でもやってみると色々な気づきがあると思いますよ。繰り返しになりますが自覚していないことは直しようがありません。まずは自覚できるように録音する、聞いてみる、気づいたことを書き出すと言ったことをやってみてはいかがしょうか?


ちなみにこのプロセスを2年間みっちり行った結果なのか、通訳している時もほぼ常にもう一人の自分が第三者として頭上で自分の訳出を聞いているような感覚があります。(うーん。いまいちな説明。分かってもらえるかしら?)


少しでも参考になれば幸いです。


日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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