手話通訳の世界

8月の1ヶ月間日本会議通訳者協会(JACI)の通訳翻訳フォーラムがオンラインで行われており、今年はオンラインのウェビナーという形で様々なイベントが開催されました。リアルタイムで参加できなかったイベントの動画を少しずつ見ていますが、先日見た手話通訳者によるウェビナーがとても興味深かったです。

私はカリフォルニア州モントレーにあるミドルベリー国際大学院の修士課程で通訳の訓練を受けたのですが、その2年間の授業で手話通訳者の方がゲストスピーカーだった回がありました。手話も世界各国で異なるのですが、アメリカですのでASL(アメリカ手話言語)と英語の通訳者の方でした。彼女のお話で手はもちろんのこと、顔の表情も文法をあらわす手段として使っているというお話を聞いて、大変だなぁと思ったことが長年印象に残っていました。

(写真はいつものごとく本文とは関係がないのですが、一昨日の仕事の現場から撮った渋谷の様子です。)


また会社員時代、私が英語から日本語に訳したものを別の方が手話にリレー通訳しをするという状況があり、ご迷惑をおかけしていないかと冷や冷やしたことも何度かあります。手話通訳者の方は会場の画面に背を向けて訳されているので、(後方にも画面がある場合を除いて)資料が見えず大変だなぁと思っておりました。


前置きが長くなってしまいましたが、今回のウェビナーで知ったとても興味深い内容をいくつか挙げてみます。


1. 同じ手話でも文化が色濃く反映される。例えばハンカチは日本の手話では手を拭く仕草だが、欧米では鼻をかむ仕草の場合が多い。

2. 手話は世界各国で異なるが、似通っている部分もあり、音声言語よりもスムーズにお互いの意思疎通ができる場合がある。

実はあるテレビ番組で日本とカナダの聴覚障がい者の方同士が手話で通じてあっているように見えたことがあって、「あれ?手話も世界共通じゃないはずなのに」と思ったことがこのウェビナーで解決しました!

3. 手話と音声日本語の文法は異なる。

4. 音声日本語よりも手話の方が言い回しが直接的である。

音声日本語であれば「今日の講演はいかがでしたでしょうか?」と聞くところを、手話では「今日の講演はおもしろかったですか?おもしろくなかったですか?」と聞くそうです!なんとも直接的ですね。

5. 手話においても日英の音声通訳と同じように単複や性別が明示されないために問題が起こる。


いかがでしょうか?興味深い内容ばかりではないでしょうか?(それとも私が言語に興味があり過ぎるから、おもしろいと思っている部分も多分にあるのかしら?)


ちなみに音声日本語から手話に訳す場合困るのは「カタカナ語が多い文章」だそうです。もちろん時と場合によるのですが、私は和語を使いたいと思う傾向が強いので、もしまた手話通訳者の方とご一緒する時があれば、この点を特に心がけると良いのかなと思いました。

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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