女優なのか俳優なのか
もうすぐ(3月8日)国際女性デーですね。そのようなタイミングもあるのか、先日男女平等がトピックの通訳のお仕事がありました。日本でも皆さんご存知のように遅まきながらではありますが、女性が(そして男性も)男女平等について声を上げ始めていますね。
そんな中で思ったことがありました。
以前に映画ブルー・ジャスミンなどで知られるケイト・ブランシェットが「私は女優と呼ばれたくない」と語る記事を読んだことがあります。もちろん英語で語っているのでactressではなくactorと呼ばれたいと言っていたわけです。これを読んだのは数年前だと思いますが、ハッとしましたよね。自分が日本語で彼女のことを話すとしたら、思わず「(俳優ではなく)女優のケイト・ブランシェット」言ってしまうのではないかと。
例えばchairmanではなくchairperson と性別を表さない言葉を使おうという潮流は以前からありましたが、actressをいう言葉を使わない方がいいのではないかというところまでは、考えが及ばないと思うのです。でもよく考えたら「男優」とはほとんど言わないわけですよね。ですから女優でなくて俳優でいいはずなんです。
日本語では主語を省略することから性別が不明確なことが多く、日英通訳をしていて困ることはしょっちゅうです。もちろん確認するチャンスがあればしますが、そうでないことの方が多いです。私自身はできるだけ(単数であっても性別が分からない場合の)theyを使うことが多いですが、余裕がない時や自分自身のバイアス(例えばこういう職種の人は男性が多いというイメージが自分の中にあった時)に自動的にheと言ってしまってそんな自分に気づくことがあります。
私自身、言葉が人の考え方に与える影響は大きいと思っているので、自分の言葉の選択によって聞き手のステレオタイプやバイアスを増幅させるようなことはできるだけ避けたいと思っています。もちろん、スピーカーがあえてそういう言葉を選んでいると明確に分かる場合はそのまま訳すことが鉄則ですが、そうでなければ通訳者としてはニュートラルなものはニュートラルに訳したい、通訳者が要素を加えることはしたくないと考えているのです。
では何が「ニュートラル」なのかですよね。先日どこかで日本語で話している時に相手の方が女性で写真撮影をされている方のことを「カメラマン」と呼びました。この場合このスピーカーの中で「カメラマン」という言葉は性別を問わず「写真を撮る人」なのでしょうね。分かる気もします。カメラパーソンという言葉はほぼ聞いたことがないし、長いですからね。Manは「男性」を表すから使わないようにするべきだと見方と、manには「人間」という意味もあるのだから構わないはずだという見方もありますね。
私自身も必ずこうすればいいとか、これが絶対のルールというのがあるわけではありませんが、言葉が与える影響について常に考えて、突き詰めていきたいです。
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