更新料と香辛料

皆さん、日本語って同音異義語が多いと思いませんか?(あくまでも個人的感覚で日本語、英語以外の言語でどこまでそうなのかきちんと理解はしていませんが。)


耳で聞く通訳の場合、同音異義語で混乱や誤解が生じる場合があるので注意が必要なんです。同音異義語の前にまず大事なのは「目で読めばすぐに分かるけれど耳で聞くと分かりにくい単語は使わない」ということです。


あまり良い例が思いつかないのですが、一応挙げてみるとこんな感じです。「煤煙(ばいえん)」という言葉があります。このように漢字を目で見れば、「煤と煙」だとすぐに分かりますよね。ですが、「ばいえん」と急に耳から聞こえてきたらどうでしょうか?普段からそのような話題が多い環境にいなければ、なかなか分からないのではないでしょうか?これはもちろん聞き手が誰なのかによるので、環境関係の会議でそういう話を頻繁にしている聞き手であれば、むしろ通訳者であるこちらがこの言葉に慣れてsmoke and sootに対して、「煤煙」と訳すわけですが、一般の方が聞いている場合なら「煤と煙」とするのが妥当だと思います。


訳出だけではなくてスピーカーを理解する際にも同音異義語で混乱が生じる場合があります。社内通訳者時代に「ていおん」と聞こえてきたので、特に迷うこともなくlow-temperatureと訳出したら、「定温」だったのですよね。fixed-temperatureになりますね。このトピックは年に数回しか出てこなかったので、その後も出てくるたびに「ていおん→低温?→いや定温」という思考の動きを繰り返していた覚えがあります。 思い込みは怖いですね。


つい先日も「しゃない」と聞いてほぼ自動的に「社内」と解釈したら「車内」でした。しかもこの時は自動車会社の通訳だったので不覚!と思いました。もちろんこの場合文脈で「車内」も「社内」もどちらもあり得たと思いますので、当然そこの判断は必要になってきます。


さて、長々と引っ張ってしまいましたが、タイトルの「更新料と香辛料」は以前某通訳者の方が聞き間違えて通訳してしまい、訳の分からない状態になった例でした。renewal feeとspiceです!似ても似つかない内容です。想像すると冷や汗が出てきます!


耳から聞いて訳出をし、それを耳から聞いてもらうからこその工夫と注意が必要だと改めて自分に言い聞かせているのでした。


日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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