ファイトとファイティン

どんな人でもそうだと思うのですが、ここが踏ん張り時というタイミングってありますよね。先週の私にとっては水曜日がそれでした。12時間労働でそのうち大半が通訳、そしてその間にメール返信や翌日の予習をし、最後の会議は世界各国の訛りにクラクラしながら通訳をして22:00過ぎにやっと仕事が終了しました。


そんなタイミングに声にして出さないまでも、「頑張れ自分」と自分を鼓舞するわけです。私自身はあまり使いませんが、日本人は「頑張れ」という意味で「ファイト」とよく言いますよね。これ英語でFight!って言ってしまっている場面を何度も見たことがありますが、だいぶ変ですね。fightの動詞の意味は「戦う、対戦する、けんかする、もめる」などがあります。Fight!と言うとこれらの意味を命令していることになってしまうのです。


では何と言えばいいでしょうか?状況にもよります。前述のような状況であればHang in there.でしょうか?スポーツの応援であれば、Let's go.とかGo for it.劣勢の人を応援するならCome on.ともいうかもしれません。相手を打ち負かせというニュアンスならGet him.とか(Get her.もありそうなのにあまり聞いた印象がないのはなぜ?ことスポーツになると男性の競技もしくは競技放送が多いから?)


「頑張ってください」の場合はどうでしょう?これも文字通りには訳しにくいですね。(運任せなのかと思うかも知れませんが)Good luck.とよく言うような気がします。ベストを尽くして頑張ることは当然として、うまくいくといいねというニュアンスですね。Go for it.もいいそうですね。頑張ってのニュアンスとはちょっとずれるかもしれませんが、You'll do great.みたいに言うとか。


「頑張ります」も訳しにくいですね。本当に文字通り言うのならI'll do my best.とかI'll try my best.なのでしょうし、文法的に間違ってはいないのですがネイティブが言っているのは聞きませんね。なぜなのでしょうね。日本人がビジネスなどで「頑張ります」と言う場面で通訳をしていて感じるのは、「当たり前のことをわざわざ言っている」違和感なんですよね。ビジネスの場で頑張るのは当たり前じゃないか、何を今更という感じがするんです。(こう感じるのは私だけなのでしょうか?)


たぶんこういう時の「頑張ります」は英語的感覚では言う必要がないことのように思います。でも日本人としては言いたくなってしまう気持ちも分かるし、実際言われた場合は私も同時通訳者として何か言わないといけません。敢えて英語で言うならI'll get it done. We'll get there.みたいな必ず大丈夫と保証するような言葉のような気がしますね。決して通訳する中身を変えると言う意味ではないのですが、概して日本語から英語にする時はより断定的に直接的に、逆の場合は少しオブラートに包むと言うかクッションを入れるというか、そんな対応は必要になってくるし、実際に多くの通訳者が行っている気がします。これが言葉だけではなく文化の間を取り持つというこの仕事の性質なのではないでしょうか?


タイトルを書いた時点で思っていたことからだいぶ話が広がってしまいました。相変わらず韓国語を勉強中なのですが、韓国人が「ファイティン」ととても頻繁に言うのです。日本語の「ファイト」とほぼ同じニュアンスで。とても興味深いです。英語の単語が日本語に入ってきて、意味がずれたり和製英語が作られていることはこれまでも何度か触れていますが、どうも韓国語でも同じような感じを受けるんですよね。韓国語はまだまだ完全なる初心者なのであくまでも現時点での印象なのですが。そんなところでも韓国語、韓国の方に親しみを覚えます。やっぱり同じアジア人だなぁと。言語ってやっぱり面白いですね!

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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