What is verbal diarrhea?
先日同時通訳をしていてふと思ったことがありました。以前よりも原語(スピーカーの言葉)との距離感がうまく取れるようになってきたのではないかと。通訳者はもちろん言葉を訳すのですが、一つひとつの単語を訳したものを単純に組み合わせるというよりは、いかにメッセージを伝えるかが大事です。各単語との距離が近すぎると言葉に囚われて伝えたいことが分かりにくい訳になる危険性があります。
もちろん内容がテクニカルすぎて自分の理解を超えている場合やスピーカーの話すスピードが速すぎる場合はそうも言っていられないのですが、内容が例えばビジネスの一般的な話でスピードがそこまで速くない場合はメッセージをより聞きやすい形で伝えることができるはずです。
通訳者として働き始めたばかりの頃は、特に英日の場合に、もしかしたら今よりも言葉数が多かったかもしれません。英日の場合は自分の母語で訳出をするので、意味が分かりさえすればどんどん言葉が出てきます。結果的に言葉数が増えすぎてしまう可能性があるのです。スピードについていける、早口で話せると自負している通訳者ほど注意が必要です。
落とせる部分をそぎ落とさずにただ言葉数を出そうという通訳は(厳しい言い方ですが)単なる自己満足に過ぎません。いくら早口で「これだけ言えた」と満足しても、聞き手にとって聞きにくい、理解しにくい通訳では意味がありません。
日本語は主語など省略できる部分が多いはずで、文脈から分かる自明の部分をきれいに落とすことで、聞き手にとってずっと聞きやすいゆとりのある通訳になります。自分の通訳を録音して英語のスピーカーのスピードがそこまで速くないのに、ひっきりなしにずっと話しているような和訳になっている場合は、どこを削ぎ落として聞きやすくするかを考えていかなければなりません。
ちなみに今回のお仕事では「聞きやすかった」というコメントをエージェントを通じてクライアントからいただくことができました。私自身も自分の通訳について気づきのあるありがたいお仕事でした。
大学院にいた2年の間は、そぎ落としの訓練も含め、どうしたら分かりやすく明確にメッセージを伝えられるのかという練習をひたすら行っていた気がします。当時ある教授がおっしゃったフレーズを思い出しました。それはverbal diarrhea(直訳すると「言葉の下痢」)です。
通訳者の皆様、verbal diarrheaに是非ご注意を!
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