I work like an ox オス牛のように働く?

8月はお盆でお休みとなる企業も多く結果的に私の仕事も普段の月に比べて若干少なかったので、溜めに溜めていたコロンボの録画をいくつか見てみました。ストーリーを楽しむのはもちろんですが、英語を聞きつつ字幕を読んで色々と考えるのが癖になっています。(むしろそれをも楽しんでいると言った方が正確かもしれません。)


今回見たのは第43話のMake Me a Perfect Murder (邦題:秒読みの殺人)でテレビ局の女性プロデューサーのKayが支社長であり恋人でもあったMarkを殺すストーリーです。重役などの重要な意思決定者が男性であり、その秘書やアシスタントが女性である状況を見ると、テレビ局という業界がいかに男性に支配されているかが分かります。この状況はアメリカや日本でもまだまだ大きく変わっていないのでしょうね・・・。


さて、そんな中出てきたセリフが今回タイトルにも使ったI work like an ox. です。このセリフには「がむしゃらに働くだけですわ」という字幕がついていましたが、英語の原文を見ると興味深いのはoxという言葉が使われていることです。oxはオスの牛を意味します。cowではないのですね。(しかもcowも改めて調べてみると、こちらはメスを指すのですね。恥ずかしながらoxがオス牛だと知っていたにも関わらず、cowがメスだと意識したことはありませんでした。)oxは主に役牛をさすので、「がむしゃらに働く」というのはその通りだと思いますが、それだけではなく「男性が支配的な業界で女性だが、まるで(ステレオタイプ的な)男性のように働く」というニュアンスも入っていたのではないかと強く感じました。


様々な業界において男性が支配的であり、例えば感情的になるとすぐに「女性はヒステリックだ、これだから女性は」と言われてしまうので、周りの男性に認めてもらえるように「男性のように振る舞いスカートもはかない」という働き方をしてきた女性も多かったのではないかと思います。(ちなみにこのエピソードにおけるKayの装いはスカートなども入っていて個人的には楽しいです。)本来は男性も女性もそれ以外の性自認の人も、(ビジネスの場であるという常識を踏まえた上で)本人が好きなように装えば良いのではないでしょうか?


もう一つ指摘したいのは字幕の文末の「わ」です。英語から日本語に翻訳される時にこのような文末とすることでいわゆる日本で考えられているところの「女性らしさ」が勝手に追加されてしまうのはどうなのかといつも思っています。また海外の女性が話している声の吹き替えが本人とは全然違う(往々にして高い声の)声優の吹き替えになっていて、本人と比べて大袈裟に「かわいらしさ」を強調した話し方になっていることが多くゲンナリします。(バラエティ番組などで見かけます。)


また、話が逸れてしまいましたが、以前「馬車馬のように働く」というフレーズについて書いたことがあり、今回似たような表現が別の動物で出てきて、しかも上記のようなニュアンスに満ちていておもしろいなと思ったので取り上げてみました。やっぱり海外ドラマの鑑賞はおもしろいし勉強になりますね。

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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