不思議な記憶の仕組み
同時通訳をしている場合、基本的に聞いたらどんどん出すという流れで、言い終わったことは忘れてしまうことも多々あるのですが、それでも語順の関係などで時にはほんの短時間ですが何かを記憶しておかなければなりません。
スピーカーが何かの説明中に例として名詞を羅列する時は、当然なるべくそれを全部訳出しようとするわけですが、たまに最初に聞いた単語の訳がなぜかスッと出てこなくて、その間に次に話が進んでしまうことがあります。
先日同時通訳をしていた時、diabetes, osteoporosis, dementiaと続けて出てきたときに、なぜか最初の「糖尿病」がスッと出てきませんでした。そこでdiabetesを一旦忘れずに置いておいて、「骨粗しょう症、認知症」と言ってから最後に「糖尿病」と言いました。
人は例を挙げるときに3つ羅列することが多い気がしているのですが、この最初に聞いたものを置いておいて最後に言うというパターンが私自身結構あります。その時に最初の単語を脇に置いておいている感覚がすごく強いんですよね。もちろん忘れてしまっては困るからなのですが、置きながら、次の2つの単語を訳して、その間に最初の単語の訳を思い出すというプロセスをとても強く自覚できるのでとても面白いなあと思います。
ちなみに場合によっては名詞の順番が大事な場合もありますし、順番通りに言えた方が脳の負担が小さいはずなので、基本的にはその方がいいと思います。ですから前述のものはどうしても思い出せない時に仕方なく取るアプローチです。また人によっては脳の中に置いておかずにメモを取るかもしれませんね。ここは人それぞれだと思うんですが、手を動かすにも脳からの指令があるわけで、私はそちらの方が負担に感じるのであまりメモは取りません。(もちろんゼロではありませんが、おそらくかなり同通中のメモが少ない方だと思います。)
もっともっと記憶力があればいいのにと思うこともありますが、人間には忘れる仕組みが備わっているから生きていけるのだとよく言いますよね。確かに通訳で日々いろいろなことをたくさん聞くので、ある意味忘れていかないと頭がパンパンになってしまうような気もします。時々ものすごく集中して通訳した後に頭が熱を持っている感じがすることがあります。(先日も7時間の通訳が終わった後に思わず頭を冷やしに散歩に行きました!)繁忙期は続きますが、頭を冷やしながら引き続き頑張っていきたいと思います。
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