いつも1対1ではない

言葉を訳す仕事をしていると、英語のある言葉と日本語のある言葉の意味が必ずしも1対1ではないと感じます。先日お引き受けした翻訳案件で以下のような例がありました。


immediate family (parents, siblings, children, spouses)という英語の表現です。この最初の部分について日本語で短く言う方法はないだろうかと思ったのですが、「直系」だと家系図でいうところの縦に一直線で繋がる系統なので、カバーしきれません。「一親等」だと配偶者が入りません。最終的には全体で「近親の家族(両親、兄弟姉妹、子供)や配偶者」としました。英語とはカッコの位置が変わってしまっていますが、これは「近親」が血縁を示す言葉であり、配偶者は入らないからです。


この資料の主題は全く別の話だったのでここまで細かく考える必要があるかどうかは分かりません。ですが、間違ったことを書くのは避けたいので、上記のいくつかの言葉を改めて調べて間違いがないようにしました。翻訳を専業でなさっている方は単語について調べるのはもちろん内容について調べることももっと頻繁でしょうし、なんといっても翻訳したものが形と残っていくので本当に大変だと思います。私は通訳を中心にしていて翻訳はごくたまにお引き受けしているだけなので、日々翻訳をなさっている方は大変だなぁと翻訳案件をお引き受けするたびに改めて思うのでした。


今回のように似たような単語でもそれぞれのカバー範囲が違うため、1対1で訳せないことは多々あります。辞書に載っている訳でもその1つの訳語が元の英単語と100%イコールであるという覚え方をしない方が良いように思います。(ビジュアルで言うとすれば単語それぞれにカバーする意味が「円」としてあって、2つの円の一部は重なっているけれど、ぴったり重なっているわけではなく、そして重なっている部分の大きさは異なるというイメージでしょうか?)


もしhaveという単語を「持つ」と覚えてしまって、日本語にする時に常にその訳語になると思ってしまっていたら、Do you have time today?という文を日本語にしようとしたらおかしなことになってしまいますよね。そんな感じです。ですから単語のイメージをとらえて、文脈に合わせて訳出する方の言語で適切な表現をすることが大事だと思います。

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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