ベテランといえば
ベテランという単語は英語由来の言葉の中でも日本語でよく聞く言葉ですよね。
さて、これを通訳するとしたらなんと言いますか?veteranと思った方は是非辞書でveteranを引いてみてください。おそらく多くのアメリカ人(もしかしたら他の英語圏もそうかもしれませんが、私はアメリカにしか住んだことがないので)はveteranという単語を聞いて「退役軍人」や「兵役経験者」を思い浮かべます。
「ベテラン」と結びつきやすい「熟練者」という意味ももちろんありますが、日本語でいうところのベテランよりも特化した分野の本当に熟練した人を指している印象があります。一方日本語の「ベテラン」は長い経験の部分は必ず指しているけれども、そこまで熟練しているのかどうかは文脈と話し手次第のような気がするのですよね。「ベテラン」をいう言葉が指しうる意味と「熟練者」という意味の場合のveteranが指す意味とを比べると、ベテランの大きな円のどこかにveteranというか小さな円が入っているようなイメージです。
通訳者にとって難しいのは聞いた単語を機械のようにただ訳せば良いのではないところです。(もちろん機械のように訳すことだけでも難しいわけですが)特に日本語の話者の話を聞いていると、「今この人はこの単語を使ったけれども、本当に言いたいことはそれではないな」と思う瞬間があります。そういう時は思い切って「本当に言いたかったであろう意味、メッセージ」を英語で言います。
以前も書いたことがあるかもしれませんが、大学院時代に実力の伸び悩みに行き詰まってある教授に相談したら「まず片方の言語で聞くでしょう?で、その内容をイメージするでしょう?で、それをもう一つの言語で出せばいいのよ〜。」と言われたことがあります。その時は「え?」という感じでした。特にこの教授はアメリカ人のお父様と日本人のお母様がいらっしゃる方でどちらの言語も家庭内で使うように厳しく育てられたとのお話だったので、私のように日本で生まれ育った日本人とは違うじゃないかと思った記憶があります。でも長いこと通訳をしていてこの感覚が分かるようになってきたんですよね。
通訳は言葉を変換する仕事ではなくメッセージを伝えるということです。言葉を操る仕事でありながら言葉に囚われすぎない、そんな通訳をこれからも目指していきたいです。
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