世界観って何?

クリエイティブな要素が入ってくる通訳はとてもおもしろい一方で、言葉が意味するところがよく掴み切れない時があり、独特の難しさがあります。よく出てくる言葉でなんかピンとくる言葉がないなぁとずっと思っているのが「世界観」です。


調べるとview of the worldという直訳的な表現が出てくるのですが、クリエイティブな文脈(例えば映画とか音楽とかファッションとか)では合わない気がします。これがなんで合わないかの詳しい説明は割愛しますが、英語があるレベルでできる方なら「合わない」という感覚は分かっていただけるかも。まあ「世界とどう見ているか」という訳になってしまっているので合わないのですよね。


それでは訳をどうしているかということなんですが、一番最近ではファッションの文脈でphilosophy and moodという風に言ってみました。敢えてmoodという言葉を足したのは、私自身がこの文脈で「世界観」という言葉を聞いたときに視覚的かつ感覚的に訴える部分が多分にある気がしていて、philosophyだけだとその感じが伝わらないと感じるからなんです。


あらゆる文脈でよくあることなのですが、片方の言語ではある言葉をすごく頻繁に使う(ここでは日本語で「世界観」という言葉をよく使う)けれど、もう一方の言語(ここでは英語)では必ず同じような(もしくは直訳的な)表現をしないんですね。つまり分かりやすく言うと「(ネイティブは)誰もそんな言い方しないよ」ってところなんです。そういう場合にどんなアプローチをするのはいつも悩ましいところです。ネィティブが言わないと分かっていても、この言語ではこう言うんですと直訳的に言い続けるのか、単語のチョイスとしては同じことを言っているわけではないけれど、言わんとしている意味を伝えようとするのか。私は後者のアプローチを取ることが多いと思います。聞いている人の言語であまりに不自然に響くと結局何が言いたいのか伝わらないと思うからです。


何度も書いていることですが、これが人間が訳をする時の思考のプロセスなんです。だから(少なくとも現時点では)人間の通訳者に強みがあると思っているし、そのことが聞いている方たちにも伝われば嬉しいなと思っています。

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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