gender-fluid をどう訳す?
ダイバーシティ(多様性)についての話題を通訳している時に、gender-fluidという単語が出てきました。まだ日本ではまだあまり定着していない概念だと思います。
試しにGoogleで検索してみると、こんな情報が出てきました。
ジェンダーフルイド(英語:Gender fluid)は、性の多様性を理解するうえで身近な概念ではないだろうか。これは、ジェンダーが流動的、つまり「自分は男だ/女だ」とはっきりと自身のジェンダー定義をせず、その時々によってさまざまな性別を行き来する考え方のこと。今日は男性の気分、月経が来たときは思いっきり女性の気分など、その日の状況や心理状態によって柔軟に変わっていく。
(出典:https://ideasforgood.jp/glossary/gender-fluid/)
ジェンダー・フルイド(gender-fluid)とは、性自認(こころの性)が複数の性のあいだで揺れ動くセクシュアリティです。不規則に変わることもあれば、場面や状況に応じて変化することもあります。
「昨日は自分を男性だと感じていたけれど、今朝起きてみると違和感がある……先週はたしかに自分は女性だな、と感じていたし。これっていったいなんなんだろう?」
このように性自認が揺れ動いた経験のある方は、もしかしたらジェンダー・フルイドかもしれません。
(出典:https://jobrainbow.jp/magazine/gender-fluid)
上記はあくまでも一部を抜粋したもので、性自認がもっと長期的なスパンで変わることもあるし、本人の性表現(振る舞う性)、つまりファッションや言動が変わるとは限らないない、また性自認と性表現は一致しないことも多いなど理解すべき点が多いので、時間が許すならば、特に二つ目の記事を最後まで読んでいただくと良いと思います。
前置きが長くなりましたが、この概念を同時通訳中にどう訳すのか。いつもの通り時間はありません。考える時間もさることながら訳出する時間がそんなにありません。はっきりとは覚えていないのですが、すごく急いで「自分の性別の認識が流動的な」みたいに言った気がします。なぜならその時の聞き手はこの概念をあまりよく知らないのではないかと思ったからです。
後で検索してみて思ったこととしてはこんな感じ。(思考プロセス)
「ジェンダーフルイド」は最初に出してもいいけれど、これだけでは通じないだろうなぁ。(ただしダイバーシティやインクルージョンのように徐々にカタカナ語で定着していく可能性もあるから言っておくのが良いだろう。)
「不定性」という単語を使った説明を見かけたが、これは耳で聞いて分からないだろうからダメだな。
「性自認が流動的」ぐらいで収められたら嬉しいけれど、「性自認」も耳で聞いた時に分かるかどうか危ういな。
ということで今回の訳出中に自分が取ったアプローチはおそらく正解の一つだったのではないかと思っている次第です。いつも正解するわけでもなく、「ああ、こう言えば良かった」と思うことはしょっちゅうです。必要な反省はしないといけないし、するのですが、100%の訳出はほぼありえないので、あまり後悔だけに縛られてしまうと同時通訳者として生きていくのが辛くなってしまうと思います。
大事なのは聞き手に合わせて上記のような思考プロセスをして、なるべく適切と思われる訳を出すということです。そしていつも言っていることですが、聞き手が理解できてこその通訳です。自分が学術的に最も正しい、よく使われている訳を出したとか、辞書の通りに訳したとか、そういうことで満足して止まっている通訳者は、うーん、あまりきついことは言いたくないので、言葉を濁しますが、どうなんでしょうという感じです。
新しい概念や、その概念が日本語でどう言われているか(もしくいないか)、どう訳せば少しでも理解が進むのか、これだけでも日々勉強ですね。
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