おじさんがオジサンを釣る

???となった方もいらっしゃると思いますが、少し前のある日の会議である参加者の方が重要なビジネスの話を始める前に繰り出したジョークです。そもそも年齢でおじさん、おばさんなどと括ることを個人的には良しとしていませんが、通訳たるもの言われたことは基本的に訳さなければなりません。


英語では一言で「おじさん」に当たる意味を伝える言葉はないので、middle-aged manと説明しないといけないし、それが「おじさん」という単語であることを言わないといけないし、オジサンという魚がいることを言わないといけないし、それらを全て言った上での「おじさんがオジサンを釣りました」なんですね。もう言うことが多くて大変です。


と説明をしましたが、実はこの部分はパートナー通訳者にあたり、残念ながら韻を踏んだ親父ギャグであることはおろか、ギャグを言ったことすらも多分英語スピーカーには伝わっていなかったかもしれません・・・。


「親父ギャグを訳せなくたっていいじゃん?」と思いますか?もちろん親父ギャグとその後のビジネスの話でどちらかしか訳せないなら、ビジネスの話が訳せる方が良いのは当然です。でも、そのギャグを聞いて、笑っている日本語話者を見て、「なぜ笑っているんだろう?」と思うはずなんですよね。私はそういう場面を見るのは(というか想像するだけでも)悲しいので、何がなんでも面白い訳を出したいです。(話が逸れますが、どうしても訳の内容で面白さが伝えられない場合は、言い方のトーンを面白おかしくできますね。英日の場合は語尾を面白おかしくすることも効果的だと思います。)


もう一つお伝えすると、その時のスピーカーは真面目なビジネスの話をする前にジョークで場を和ませようとしたんだと思うんですよね。私たちが人に対する印象を長期間で作り上げていくときに、こういう瞬間もそこに含まれると思うんです。「あ、この人はこうやってまず場を和ませて話すタイプなんだな」とか。ですからそういう意味でも訳出をしたいなと思うわけです。まあ、もちろん日本語話者のリアクションを見て内容は分からないまでも、ジョークを言ったんだなというのは分かる可能性も大なんですが。


何気ないジョークでしたが、改めて色々なことを考えるきっかけになりました。

日英同時通訳者 古賀朋子 English-Japanese Interpreter Tomoko Koga

‟天職を生きる” 日英同時通訳者 古賀朋子(Koga Tomoko)のホームページです。お気軽にお問合せください。

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