チャレンジという言葉の罠
タイトルだけを見たら何やら深い内容が書いてありそうに思えますが、何のことはありません。日本語のチャレンジという単語と英語のchallengeという言葉の使われ方が違うので注意してくださいねという内容です。
日本語で「チャレンジする」とよく言いますよね?これは動詞として使われていますが、結局は「挑戦する、やってみる」という意味ですよね?さて、これを英語にしたい時はどのように言えば良いのでしょうか?動詞のchallengeだと思いますか?日本語の辞書を引くと「挑戦する」と書いてあるのでI challengeで良いのではと思うかもしれないのですが、英語スピーカーはあまりそのように言わないんです。(というか主語+動詞のchallengeの場合違うニュアンスで使うことが多いです。後述します。)
Cambridgeオンライン辞書における動詞のChallengeの説明(和訳は機械翻訳したものです)
to invite someone to compete or take part, especially in a game or argument
誰かを競争や参加に誘う、特にゲームや議論の場合
to question if something is true or legal
何かが真実か合法か疑問を呈する
to test someone's ability or determination
誰かの能力や決意を試す
to tell someone at a border or gate to stand still and say their name and reasons for being there
国境やゲートで誰かに立ち止まり、名前とそこにいる理由を言うように命じる
to refuse to accept someone as a member of a jury
誰かを陪審員のメンバーとして受け入れることを拒否する
最後の二つは私も初めて知りました!さて、ビジネスの場で英語スピーカーがchallengeを動詞で使った時はどんな意味なんでしょうか?圧倒的に良く聞くのは2番目の意味だと思います。We encourage you to challenge your colleagues/superiors. のように使われている場面がとても多いです。ニュアンスとしては「同僚や上司の言うことをただ受け入れたり聞くのではなく、必要に応じて異議を唱えたり疑問を投げかけてみることをお勧めする」という感じです。実際の通訳の場ではこんなに長く説明できないので、きちんと伝わっているのかいつも若干不安なのですが。
日本では特に和を重んじて、人の意見に異を唱える文化があまりないため、なかなか難しいことだと思います。ですが、外資系の会社だと本当に良く聞くタイプのコメントです。自分の肩書きや立場に関係なく、そして相手の人格を傷つけることなく、異を唱えましょうということなんですね。日本人は言われた側も人格を否定されたように感じてしまうことが多いような気がするんですが、言い方が悪くなければ、そうならないはず(ならなくてもよいはず)なんです。
かなり前の話ですが、ある会社に勤めていた時に、20才ぐらい年上と想像される男性と立食のお疲れ様会で話していた時に、私はその方と違う意見を持っていたので、その旨を説明したんです。(確か業務そのものの話ではなかったと記憶しています。)しばらく議論しましたが、平行線だったので、「ではこの件に関してはXXさんと私の意見は違うということで、この話は終わりにしましょう」と言ったんです。英語でいうところのWe agreed to disagree.というやつですね。
ところが彼は怒り出して「こんなに話の分からない人だと思わなかった」という趣旨のことを、もっとどぎつい言葉で私に言ってきました。本当にびっくりしました。その方は英語を話される方ではあったんですが、英語という言語の後ろにあるはずの文化や考え方への理解は全くなく、年下の女性である私が彼の意見に同調しなかったのが、ただ気に食わなかったとしか思えませんでした。
いやー書いているうちに思い出してしまって予定外の内容に飛んでしまいましたが、話を戻しますね。では日本語の「チャレンジする」にあたる意味を英語スピーカーがどう言っているかといえば、I will try.もよく聞きますし、これだと軽すぎる場合や、もっと壮大な挑戦や難題に立ち向かうようなニュアンスなのであれば、take up the challengeという表現も使えると思います。この場合のchallengeは名詞になります。英語と日本語の間を行き来する時は品詞を変えた方が自然なこと、もしくは変えないと意味がずれてしまうことが皆さんが思っている以上によくあるのですよ!(ですから、日本語の「チャレンジする」を例えばI will challengeとか言っている通訳者がいたら、うーん、控えめに言っても本当に微妙です。)
英語の単語が元になってカタカナ化している単語でもこのように注意しないと意味がずれてしまいます。英語を聞いた時になまじ知っている単語だけに、意味を誤解してしまうこともあるので、注意が必要ですね。
ということで久々の和製英語(?)の罠という感じのお話でした。このブログはすっかり韓国(語)オタクのブログ化していますが、たまには言語のプロらしいことも書かないといけないですね。ではまた!
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